今回は、2020年6月11日 朝日新聞に掲載された、テレマーケティング会社大手の「りらいあコミュニケーションズ」の問題から、
- 何故人は間違った指示に加担するのか
- 間違った指示から自分を守るにはどうするか
について考えていきたいと思います。
まず、当該の問題についてのTwitterで以下の発信がありました。
2020年りらいあの音声改ざん・捏造問題
【独自】東京電力が家庭向けに販売する電気・ガスの電話勧誘業務を請け負った「りらいあコミュニケーションズ」が、顧客との会話を録音した音声データを改ざん・捏造していたことが、朝日新聞の取材で分かりました。https://t.co/ehmaNC2HHq
— 朝日新聞社会部 (@Asahi_Shakai) June 10, 2020
また、「月刊コールセンタージャパン 2020年8月号」でTopicsとして取り上げられており、今回当該の問題について改めて考えてみたくなり、記事を更新するに至りました。
先に当記事の結論を上げておきます。
- コールセンター暦15年以上
- 元外資系メーカー営業マン
- 受信/発信/講師/SV/Mgr経験
- 高度HSPの繊細さん
- 在宅コールセンター副業経験有
- コールセンターハック管理人
コールセンターの音声改ざん概要
音声改ざんって
具体的にどんな
内容だったんでしょう?
成約に不利なやり取りを
ごっそり削除してたみたい…
この問題の概要としては、コールセンター大手のりらいあコミュニケーションズの一部従業員において、顧客との会話記録を改ざんし、不適切な電話勧誘を行ったとあります。
音声データの改ざんは、2019年の約1年間で合計44件。
改ざんの内容
以下は改ざんの例として朝日新聞が掲載していたもの。
赤字部分が編集でカットされていたそうです。
「東京電力エナジーパートナー」(東電EP)から電話勧誘業務を受託した「りらいあコミュニケーションズ」による音声の編集手法は2パターンある。
一つは、契約を得られなかったはずのやり取りなどを削除する改ざんだ。
オペレーター(以下、オ)「このお電話でご契約成立となります」女性「成立ってことになっちゃうんですか?」
オ「いえいえ、しません」
女性「ですよね。書類をアレしてでしょ」
オ「書類が約1週間後に届きまして、それを確認していただいて」
女性「分かりました」
(朝日新聞6/11記事より引用)
実際はこんなやり取りがあった千葉市若葉区の高齢女性との会話は、編集によって最初と最後の発言以外が削られ、「契約成立になります」「分かりました」と契約を了解する形になった。
完全にアウトですね…!
捏造の内容
また、改ざんのしようがない通話記録については、りらいあ社の社員が「替え玉」と呼ばれる客役を務め、会話を作り直す捏造もあったそうです。
りらいあ社の社員が「替え玉」と呼ばれる客役を務め、会話を作り直す捏造パターンもありました。
野太い声、明らかに別人 高齢者へ不当勧誘、捏造の実態:朝日新聞デジタル https://t.co/hdBI0JuFir #りらいあコミュニケーションズ pic.twitter.com/75vsoNdI6G
— 朝日新聞社会部 (@Asahi_Shakai) June 10, 2020
いや、どうしようもないな!
改ざん・捏造は一人の管理者からの指示だった?
そして、本件は「現場管理者1名の判断と指示だった」と公表しています。
本当に1人の指示だったかどうかは、もう憶測になってしまいますので、今回の記事では考察しません。
そこで、仮に1人の管理者からの指示だったとして、指示を受けた側の心理について考えたいと思います。
指示を受けた側へのバッシングが目的の記事では決してありません。
管理者
契約成立になるよう、音声編集して。
受けた人
は、はい。
指示を受け、それを実行してしまった「何か」が現場にあったのだと思っています。
今回の件を教訓として、
「明日は我が身」
間違った指示をはねのける力を、私たちはどうすれば身に付けられるのか。
という視点で記事を書かせて頂いています。
コールセンターの音声改ざんから考える「なぜ不正に加担するのか」
いや、こんな指示されても
言うこと聞かないでしょ!
その現場で働いてないと
分からない空気が
あったと思うんだよね。
加担してしまった人の事を考えるに私は、
- 同調圧力
- エージェント状態での自己正当化
この2つがあったのではないか、と考えています。
(同調圧力)
みんなやってるし。
ここでは普通の事なのかな。
(エージェント状態)
あの人からの指示だし。
これは会社の為にやる義務があるんだ。
音声改ざんの裏にあった?現場の同調圧力
同調圧力?
そう。
全体の空気に従うのが
良い事だと思ってたのかも。
日本人は特に「同調圧力に弱い」と言われています。
同調圧力とはその場での強い意見にあわせてまう心理
同調圧力とは、地域共同体や職場などある特定のピアグループにおいて意思決定、合意形成を行う際に、少数意見を有する者に対して、暗黙のうちに多数意見に合わせるように誘導することを指す。
Wiki
特に権力のある人、立場の強い人への同調。
これは同調圧力 = 悪い のではなく
社会人として大切な、共感力が高かったり、
協調性があって高度な社会性がある人ほど、この同調する力が高くなるという事です。
本当はダメだけどさ、
これくらいはしょうがないよねー。
で、ですよねー!
音声改ざんの裏にあった?②エージェント状態からの自己正当化
エージェント状態?
自己正当化はなんとなくわかるけど。
役割を細分化された仕事だと
いかに悪い事でも
正当化しながら
実行してしまうんです。
エージェント状態とは、自分の行動を「他人の願望をエージェント(代理人)として実行している」と考えるようになる状態です。
先に紹介した同調圧力もそうですが、
「従順な一般人」が不正や悪に加担してしまう心理状態です。
この状態に陥ると「普通の人が、条件さえ揃えばいとも簡単に残酷なことをする」という事が、多くの実験で分かっています。
また、実例で上げると過去の恐ろしい「ホロコースト」です。
日々、組織的に行った絶滅政策・大量虐殺。
この実務責任者である「アイヒマン」ですが、
この人の素性は「実直な公務員そのもの」だったそうです。
とんでもない悪人でなくても、「従順な一般人」が悪事に加担しうるという、恐ろしい事実です。
アイヒマン実験から分かるエージェント状態の症状
この「実直な公務員アイヒマン」の心理について検証しようと、多くの実験が行われています。
この記事では、その実験から一つだけ紹介します。
・「罰が学習に与える影響の実験」と称して、先生役と学習者役を集める。
・学習者は椅子に座って固定され、椅子に座り固定される。
・先生役の仕事は、学習者に罰を与えること。
学習者が回答を間違えた時にボタンを押すように指示される。
・ボタンを押すと椅子から電気が流れる。
また、ボタンを押す度に電圧が強まっていく。
事前の予測調査では、最大のボルトまで電圧を上げるのは1000人に1人と予想。
実際は40名のうち25名と半分以上が、最大まで電圧を上げた。
似たような実験は他にもあるそうですが、同じような結果が出てしまっているそうです。
話を今回の音声改ざんの不正に戻します。
「月刊コールセンタージャパン 2020年8月」内の記事によると、りらいあコミュニケーションズの件、過酷なノルマ設定はなく「通常業務範囲内のプレッシャーだった」とのこと。
▼コールセンタージャパンおすすめ記事
» 参考:コールセンターの業界紙は電子版で読め!【定期購読不要で読める】
通常範囲内のプレッシャーですら不正に向かう空気があった、とも言えます。
恐らく、自分を見失った危険な状態で日々の目標を追いかけ続けていたのだろうと、私は思います。
不正・間違った指示をはねのける力
同調圧力も
エージェント状態も
最悪じゃないですか!
そうだね…。
でも、会社として働く上で
普通の状態ではあるんだよ。
同調圧力とエージェント状態、一般的な会社員にこそ恐ろしい心理状態ではないでしょうか。
同調することと、権威に従うこと自体は悪い事ではありません。
組織を円滑にスピーディに動かす為には大事な事です。
しかし、悪い方向へ行きそうになったとき、もっと早く立ち止まる事が出来たらよかった。
結果的に本件の不正は1年間続き、りらいあ従業員による内部告発で20年1月に発覚となっています。
先ほども書きましたが、周りの人との同調、権威へ従うこと、これ自体は悪い事ではありません。
ただ、一般的な感覚や常識と照らしあわせて「疑いの目を持つ」事が必要なんだと思います。
全ての指示を
妄信して仕事をするのではなく、
普段から常識と非常識の
軸を自分の中で持っておこう!
はい!
ニュースとか読書とかで
日頃から勉強してないとですね。
組織の中だけで日々過ごしていると、一般的な常識が自分の世界から消えてしまう事があると思います。
社会の常識や情報に触れるには、自ら情報収集をしていかなければいけません。
普段から本を読んだり、ニュースに触れたり、会社の外の情報から取り残されないよう、アンテナを立て続け、「これは違う」と感じる力を付けましょう。
参考書籍
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